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グランドグリーン入社までの歩み



インタビュー記事:小林 健人 研究開発部マネージャー 博士(農学)

農学部・修士課程修了後、種苗メーカーにてブリーダーとして勤務

種苗メーカーを退職、博士課程に進学

博士号取得後、グランドグリーンに入社



Q.なぜ農学部に進学したのですか?


 その時は明確に何かなりたいというのはなかった気がします。ただ、食べることがとにかく好きで、「食べる」って言ったら農学部かなという漠然とした理由で決めました。その時は、食べ過ぎで体重は100kgくらいありましたね。じっとしていられない性分なので、結果的には、農場実習、実験が沢山あってとても自分に合っていたかなと思います。農学部ではいろんな授業を受けたのですが、「植物育種学」という授業に一番興味を持ったことを記憶しています。授業を受けた時、普段口にしている野菜や穀物などが、人類の用途に合うように、こんなにも育種されているのかと衝撃を覚えました。『トウモロコシの野生種の最有力候補はテオシントです。』と言われて、図鑑を見てみても本当かどうか信じ難かったですから。後に自分が育種というものに仕事として携わるとは、その時には夢にも思ってませんでしたが、そんな仕事ができたら楽しそうだなとは思っていたかもしれません。



Q.学部や修士課程時代はどんな研究をしていたのですか?


 学部・修士課程では「F1ハイブリッド種子の商業生産に資する植物形質」に関する研究に取り組みました。市場に出回っている野菜の種子はほとんどF1ハイブリッド種子というもので、そうでない品目はおそらくマメ類やレタスぐらいでしょうか。中でもアブラナ科、ネギ、ニンジンなどは「細胞質雄性不稔」という性質を母親に用いて種とりを効率化しています。この細胞質雄性不稔性は細胞内のミトコンドリア内にある遺伝子の発現で引き起こされるのですが、核に存在する遺伝子の働きによって、このミトコンドリア遺伝子の働きがキャンセルされて、稔性が回復することがあります。核の遺伝子がどのように働きかけて、稔性を回復させているのか?その分子メカニズムを研究していました。研究成果を出したいという一心で、自分の所属の研究室だけでなく、学外の先生にも実験指導を受けたりもしながら、必死で研究に取り組みました。モチベーションは何であったのかよく思い出せないのですが、とにかくがむしゃらでした。



Q.その時続けて博士課程に進学しようとは思わなかったのですか?


 博士課程に進学したい、研究を続けたい、という気持ちは少なからずありましたね。研究は楽しかったし、自身の研究内容をやっと少し理解できて、周囲の方々に話せるところでもありましたし。一方で、「博士課程」というところに対して経済的、将来的な漠然とした不安もかなりありました。そのような中、恩師(指導教員)に日頃から親身にアドバイスを頂く中で『一度社会に出てみても良いのでは?また博士号が本当に必要だと思ったらその時に取れば良いのでは?』という考え方に至り、就職することを決めました。多分、当時の私は 「博士課程」に進学する意義を明確には見出せておらず、漠然とした不安みたいなものが勝っていたのだと思います。そして、おそらく、恩師はそれを早くから見抜いていたのだろうと思います。



Q.初めての就職活動はどうでしたか?


 かなり苦戦しましたね。最初は、製薬、化学、農業、食品など色々な業界を見てみようということで就職活動を始めました。しかし、途中から自分の能力や適性はやっぱり「農業」や 「食」の分野だと半ば強制的に気付かされ、それらに絞り込みました。職種としても、最初は、折角、修士まで進んだのだから『研究職に就きたい!』と意気込んでいたのですが、研究職希望の修士の学生は大勢いて、自分より優秀な学生もごまんといるという状況に気づき、弱腰となっていました。それでも辛抱強く活動を続け、最終的には、無事、希望していた野菜種苗メーカーに内定を頂くことができました。当時の私にとって研究と就職活動の両立はとても厳しいものでした。それまで、本気で取り組んでいることを2つも走らせたことはありませんでしたからね。でも、今思えば良い訓練だったかなと思います。




Q.前職の種苗メーカー時代のことについてお聞かせください。


 最初、ブリーダー候補ということで農場研修を受けたのですが、現場の農業に関する基本的な知識が圧倒的に不足していましたね。言い訳ですが、修士課程時まではラボワークが主でしたから。用語一つとってみても、「一畝?」、「サブソイラ?」、「IB化成?」、「暗渠?」、「白黒ダブル?」という初心者レベルでしたから、今思えば酷いですね。育種以前の問題でした。これでは農家さん、種苗店さん、農協担当者さんとまともに会話もできませんから。研修終了後は、アブラナ科育種チームに所属して、ダイコン育種のあるセグメントを先輩から引き継ぎました。その先輩は『自分の発想で自由にやってみて。』という感じでしたので、早くから主体的に仕事を行うことができ、自分のアイデアを色々試せる環境でした。アブラナ科の育種は基本的に「播種→栽培→調査・選抜→採種栽培→交配→採種」の繰り返しとなりますが、それらの計画を含め、どれもほぼ初めての経験でしたので、悪戦苦闘の日々でした。


 育種の「知識」については少しばかり自信があったのですが、実践となると勝手が全く違いました…パートさん、先輩、同僚、多くの方々のご協力を頂きながらなんとか回してましたね。数十年来、ダイコンの育種に携わられていたベテランパートさんには実務を1から10まで教わりました。これらの業務に加えて、ダイコン産地に赴いて、品種の普及活動なども営業担当やマーケティング担当と一緒に行なっていました。産地では農家さんに品種の評価をして頂くなど多くのことを教わりました。


 実務に慣れてきた入社3年目頃には『どのようなダイコンを開発すれば、どの程度の方々を、どの程度喜ばすことができるのか?そのダイコンを開発するためにはどのような素材を用いて、どのような環境で親系統を選抜するべきか?』といった育種目標や戦略の部分を良く考えるようになっていましたね。種苗メーカーの研究開発本部で合計5年間勤務しましたが、最終的には新品種の上市にも関わることができ、「モノづくりの楽しさ、大変さ」を教えて頂きました。この経験は、現在の業務を遂行する上で自分の強みとなっており、前職に対しては感謝しかありません。



Q.博士課程に進学しようと思った最初のきっかけは何かありますか?


 種苗メーカー在籍時に海外ビジネスユニットの種苗メーカーのブリーダーや研究員の方々とコミュニーションを取る機会が結構ありました。そこで、彼/彼女らは個々の品目の実際の育種戦略だけでなく、植物育種における全体のスキームに対して『私はもっとこうしていくべきだと考えている!』といった「哲学」みたいなものを皆が持っていて、そして、彼/彼女らのほとんどが博士号、PhD、を持っていたということに気づきました。その「気づき」が最初のきっかけですかね。さらに、彼/彼女らは論理的に議論することに非常に長けていて、きちんと自分のアイデアの正当性を主張し、議論から逃げることがなく、相手の意見も上手く自分のアイデアに取り込んでいました。それは、当時の私に最も足りていない部分でしたね。『こういう能力はどうやったら身につくのか?』と色々な方々に相談している中で、『論理的な議論や自分の考え方の正当性を説明する訓練を最も経験したのは博士号取得中だったよ。』というご意見を頂いたこともきっかけになったのではと思います。また、私は育種スキームを変えうる先端テクノロジーに関して、常日頃からアンテナを張っていました。その先端テクノロジーが『本当に育種の現場で役に立つものなのか?』自分自身で学んで確かめてみたいと強く思っていました。この「気持ち」が博士課程進学の大きな原動力になりました。



Q.博士課程ではどのようなことを学びましたか?


 博士課程ではゲノム編集に代表されるような生体内のDNAやRNAを操作する先端テクノロジーについて学びました。博士課程時の恩師には研究の指導だけでなく『10年後に自分がどうなっていたいかいつも描きなさい。それに向かって行動しなさい。』と日頃から指導を受けていました。そして、それを考えるための最適な環境を提供して頂いていたなと思います。というのも、博士課程時の恩師も大学発ベンチャー企業を立ち上げておられ、そこには様々な経歴をお持ちの社員の方々がいらっしゃいました。そんな方々と日頃からお話しさせて頂く中で、ベンチャー企業やそこで働く方々が持っている「変化を恐れない精神」、「スピード感」、みたいなものが自分にとっては大変魅力的に映りました。また、皆が主体的に行動していて、立場によって長期、短期の違いはあれ、一人一人が明確なゴールを語っていたことは単純に『カッコイイな。』と感じました。このような稀有な環境下で学生生活を送れたおかげで、10年後のなりたい姿を少しずつ具体化できていったように思いますし、ベンチャー企業というものが自然と博士号取得後の進路の選択肢になっていましたね。





Q.どうしてグランドグリーンに入社を決めたのですか?


 博士課程在籍中から食農分野に貢献したいという気持ちは変わらず強くありました。そして、これまでの経験から、植物をよりダイレクトに改変することができる先端テクノロジーに立脚して新たな種苗分野を今まさに切り拓いていこうとしている企業で働きたいという考えに至っていました。そんな中で、「異科接木」という非常にキャッチーな言葉に興味を惹かれ、グランドグリーンという名古屋大発ベンチャー企業の存在を知りました。その時、採用活動しているどうかはあまり気にせず、とりあえず会社宛に自己紹介文のメールを送りつけてみましたね。それがグランドグリーンとの出会いです。そして、創業者の野田口、丹羽と話をする中で、グランドグリーンは「異科接木」や「ゲノム編集」などの先端テクノロジーに加えて、従来技術である「同科接木」や「交配」も活用しながら植物が持つポテンシャルを最大限引き出すことにより次世代の食農分野に貢献しようという会社であることを知り、大変共感を覚えました。グランドグリーンであれば、これまで培ってきた自分の強みを十分に活かして、そして、楽しみながら仕事ができると思い、入社を決めました。



Q.現在はどんなことに取り組んでいますか?


 最近、アグリ分野においてはロボット、ICT、AI、植物工場などを活用したスマート農業が注目されていますが、それに伴って、スマート農業に合わせた新たな植物育種の潮流みたいなものが生まれてくるのではと考えています。栽培する環境や方法が変われば、それに適した品種を選ぶというのは自然な流れだと思いますしね。そういったことから、現在、次世代ファームや新たな栽培体系に最適化した品種の作出について様々なパートナーさんと連携しながら取り組んでいます。また、ラボと圃場の垣根なく仕事していますね。これまで自分が培ってきた経験を活かして、この潮流をしっかり掴んでいきたいです。



Q.今後の目標は何ですか?


 現在、グランドグリーンと言えば「接木」となると思うのですが、次の事業の軸を構築できたらと思いますね。ですので、現在は、研究開発だけでなく事業開発にも関わらせてもらっています。事業を視野に入れて開発するのと、しないのでは研究開発の方向性やスピード感が大きく違ってきますから。自分で開発したモノや技術を基に、実際に事業を建てて、会社を大きくしていくことができたら最高だと思っていて、それが今の私の働く大きな原動力になっています。

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